軽井沢スキーバス事故を別視点から考える

こんにちは。北陸の食パンです。

今日は過去の遠征の続きを載せようかとも思いましたが、諸事情により内容を変更して、わいとしては珍しく時事について触れます。今回、とても痛ましい事故が起きてしまったので、その件についておよび補足的な情報を中心にかいていきたいと思います。

今回書く記事は、本日未明に発生した「軽井沢バス転落事故」について書きたいと思う。今回このことについて書こうと思った契機としては、今回発生した事案がスキーツアーバスという案件で、かつわいもかつて携わっていた時期があったことから、事故そのものだけにとどまらず、少しばかり業界事情に関しても踏み込んで話をしていきたいと思う。


 

□今回取り扱う事故についての概要

軽井沢スキーバス転落 14人死亡、27人けが 長野・軽井沢町

15日午前2時ごろ、長野県軽井沢町の国道18号碓氷バイパスの入山峠付近で、スキー客を乗せたバスが道路脇に転落した。総務省消防庁によると、乗員・乗客41人のうち、14人が死亡し、27人がけがを負った。

 バスは群馬県から長野県方面に走行中、対向車線へはみ出した後、ガードレールをなぎ倒して道路右側に転落。斜面で横倒しになり、フロントガラスが割れるなど車体前面が破損した。

現場はJR軽井沢駅から南に約2キロの地点で、バスは左にカーブしながら緩やかに下る坂を走っていた。路面の凍結はなかったという。県警に入った事故の一報は、乗客女性の「バスが横転した」との110番だったとしている。

バスは東京の旅行会社「キースツアー」が企画したスキーツアーで、長野県北部のスキー場に向かう途中だった。


□スキーバスの運行形態について

スキーバスには日中便(朝発)と夜行便があるが、ここでは今回事故が起きた時間帯である夜行便について解説する。また、解説例として東京発の場合を本稿で取り扱うこととする。

なお、本稿では事故が発生した往路便のみを取り扱い、復路便についての解説は省略させて頂く。

この項目については業界事情を踏んで話をしていく。Twitterであまりに無知な発言も垣間見えたので、事情を知らない人たちにもわかりやすく説明していきたい。

まず、スキーバスツアーにおける主力は夜行便である。なんといっても現地に朝ついてスキー・スノーボードができるからだ。

スキーバスツアーにおいて、東京発で人気の場所といえば、志賀高原・白馬・北志賀・斑尾近辺があげられる。スキーバスツアーではこれらの場所へ行くのに東京(池袋や新宿が多いが、一部は他地域からの出発便もある)を22:30〜23:00ぐらいに出て、現地6時前後(一番手前のスキー場)に到着するようにしている。

このダイヤにするためには、あるからくりがあるのだ。

それは、「高速を使うのは東京に近い特定の区間だけで、あとは延々と下道を走る」というからくりである。

これにはいくつか理由がある。


 

壱:時間的な問題

行程中、全ての区間で高速を使うと現地に早く着きすぎてしまう。また、深夜帯に着いたところで現地のレストハウスやインフォメーションセンター、スキーレンタルショップなどが開いているわけでもなく、開くまで凍えながら過ごさなければならない。前述の理由から、東京を出てから途中までは下道(だいたい30分前後ぐらい)、それから東京寄りの高速道路を走った後、再び下道を走って現地へ向かうというパターンが基本である。

例えば、志賀高原・野沢・斑尾・赤倉方面は関越道所沢〜藤岡間ないしは練馬〜東松山間、苗場・上越・菅平方面は練馬〜東松山間、白馬方面は中央道調布〜勝沼間が高速指定区間になっているツアー会社が多い。

なお、磐梯・蔵王方面だけ距離的な問題から他方面よりも高速道路走行区間が長くなっている。例えば、蔵王方面(山形側直行)の例として首都高〜東北道福島飯坂ICまで高速。そこから現地まで下道という方式をとっている。

また休憩についても初回だけ高速道路のSAで少し長めの休憩、あとはドライブインや道の駅でトイレ休憩程度レベルが一般的である(但し、距離の長い蔵王行きの便は2度高速道路のSAで休憩するパターンが多い)。

なお、例外として高速道路途中区間が通行止めだったり東京都心部が大雪で交通マヒを起こしている場合等で旅行会社から渡される運行計画書通りに運行すると現地に着く時間が大幅に遅延すると見込まれる場合のみ、指定区間以外の高速道路を走行するケースもある。

但し、その場合も旅行会社の裁量に一任されており、旅行会社が高速道路指定区間以外の走行を認めない限り、基本的にバス会社の運転士は勝手に走行経路を変えてはならない決まりがある。

ちなみに、走行経路の他、休憩地点などについても旅行会社から渡される運行計画書に沿ってバス会社の運転士はスキーツアーバスを運行しなければならない。

また、更なる例外として集客上の都合により離れている複数箇所(例えば志賀高原経由赤倉妙高行き)を結ぶ場合は現地間の移動時間短縮のため通常の指定区間以外の高速道路を走行するケースはある。

しかし、こういうことは閑散期やバスの配車都合などによるものであり、前述の場合においても現地間を高速道路で走行する場合、運行計画上別途指定区間として組まれているのが普通なので、本稿での詳しい解説は省略する。


 

弐:値段的な問題

基本的にスキーバスツアーはJRスキーツアーよりも廉価に設定されているのが一般的である。また、バスは高速道路料金区分で特大車扱いとなっており、普通車以上に料金がかかる

もし、夜行で全区間高速道路を走行すると仮定した場合、数千円単位で料金が跳ね上がるはめになるから、下手に料金をあげるとスキーバスを利用する客層(主に大学生・若者をターゲットにしている)の客離れは避けられない。従って、高速道路の利用を最低限に抑えて、その客層にあった値段を提供しているのである。まあ、セール時以外に安すぎるところは考えものであるのだが・・・。

また、近年の各種規制緩和の影響で値下げ合戦が行われている風潮もある。旅行会社のツアーも例外ではない。

ただ、前にあった都市間ツアーバスとスキーツアーバスの値段設定等は性格が違う事だけは読者に理解してほしいものである。ただ安かろう悪かろうといって叩くというのは筋が違う話だ。


 

参:スキーツアーにおけるバスの運転士は原則ツーマン運行

今回の事故のあったツアーでもそうであったが、スキーツアーにおけるバスの運転士は原則ツーマン運行を基本としている。夜間帯の運転かつ雪道を走ること(チェーン着脱のこともある)、発地および着地における荷物の上げ下ろしの時間短縮の面などからそのようになっている。

ちなみにスキーツアーバスにおいては約1時間半から2時間ごとに1回乗務員交代が行われる。運転してない相方は基本的に運転席後ろの先頭座席で仮眠をとることとなっており、深夜帯は実質的にワンマン運転ということになってしまう。

おそらく事故当時も相方は仮眠をとっていたがために、異変に気づかず事故が発生してしまったものと思われる。万が一異変に気づいたら普通は何としてでも運転してるほうを確認して何らかの措置が講じられるはずだ。もちろん、講じたとしても事故が起こらない訳ではないが、今回の痛ましい事故までには発展しないことだってあり得る。


 

【考察その壱】本当に運行計画書と異なるルートを走ったのか?

一部報道で「本来事故現場のあった区間は通らず、上信越道を通る予定だったが、運転士が異なるルートを走った」とのことである。

しかし、わいはこれに関して疑問を呈する。もちろん、ツアー会社によっては異なる事があるのは承知しているが、関越でいったん降りて上信越道の松井田妙義〜佐久間だけ乗り直すというのはスキーツアー大手でも基本的にやってないはずである。

スキーツアーセンディングのバイトをしていたことがあって、その際運行計画書を見た事があるのだが、志賀高原・野沢・斑尾・赤倉・妙高方面で「松井田妙義〜佐久間」だけ再度乗り直すような計画書は見た事がない。

また、横川のドライブインを休憩指定地にしているツアー会社もあり、碓氷バイパスは他ツアー会社でも常用しているのは言うまでもない。

参考までに当該区間の特大車料金を以下に掲示する。

練馬〜東松山間 約3600円
練馬〜佐久間 約7500円
練馬〜東松山間+松井田妙義〜佐久間 約5600円

ここではわかりやすく説明するため、おおよその金額で示させて頂いたが、練馬〜佐久間の通しより練馬〜東松山間+松井田妙義〜佐久間で分割乗りした方が安い。とはいえ、スキーツアーの代金から乗り直す余裕があるかといったら、ないどころか下手したら赤字案件のはずである。

ツアー代金から各種経費(現地宿泊・バス運航費等)を差し引いて旅行会社に残る金はわずか数千円程度。その少ない利益を犠牲にしてまで高速をもう一度乗り直す事は前述の例外以外の事案では考えにくい。

まだ真相究明まで時間を要するので、完全なことは言えないが、バス会社に責任を押し付ける為に旅行会社が苦し紛れの逃げの為に嘘をついている可能性も十二分に考えられる。

もちろん、運行計画書通りで運転士判断でルートを変えたなら事実としては間違いないのだが、監督責任や旅程管理などの面で問題となるのは避けられないであろう。


 

【考察その弐】死者が十数名に上ってしまった要因

犠牲者が増えてしまった要因としては乗客の「シートベルト非着用」。これに尽きる。スキーツアーセンディングのバイト時代においてもやはり非着用者が多いのかバスの運転士から放送で促すよう言われた事もあったし、センディングマニュアルにおいても「シートベルトを着用してください」の文言があった。

センディング業務だけなのでバスが出発した後のことは知らないが、道路交通法でシートベルト着用義務化された後でも、バスにおけるシートベルト着用率はそんなに高くないと思われる。

参考:軽井沢スキーバス転落 シートベルト着用徹底せず、指示なく被害拡大か

参考記事中にはシートベルト着用の指示がなかったというが、指示があろうがなかろうがシートベルトを着用していれば、本来失われずにすんだ人命もあったとだけは伝えたい。

事故が起こってしまった後の結果論だからどうしようもないかもしれないが、今後こういう痛ましい事故に発展しないためにも「安全は一事が万事」ということを頭に入れてシートベルト着用に努めて欲しい。


 

また、事故の原因となったであろう、速度超過(乗客の証言あり)・(推測の域を出ないが)居眠り・運転士の発作(現時点可能性としては否定できない)などが挙げられるが、今後の動向に注目したいところである。

今回の事故は、わいにとっても予備知識を備えていたので、その知識をできるだけ使って今回の事故に関して、ろくでもない情報を刷り込むワイドショーとかマスゴミ関係各記事を鵜呑みにせず、冷静に分析してほしいとの意味を込めて今回この事故に関して記事にさせて頂きました。

最後に、亡くなった人たちのご冥福をお祈りするとともに遺族各位には哀悼の意を表します。


コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

最初に戻る

error: Content is protected !!